遺品整理のタイミングにおいて重要なもうひとつの側面が、「形見分け」と「相続放棄」との関係です。これらの行動には感情的・法的な意味合いが伴い、誤った順序で実施することで後悔やトラブルを招くケースが少なくありません。
まず、「形見分け」とは、遺族間や親しい関係者に対して故人の愛用品や記念品などを分配する行為です。しかし、相続手続きが完了する前に行う形見分けには注意が必要です。というのも、財産的価値を有する物品を勝手に処分することが「相続財産の先行取得」とみなされる場合があり、遺産分割協議に悪影響を及ぼす恐れがあるためです。
次に、「相続放棄」の場合ですが、これには明確な法的ルールが存在します。相続放棄とは、相続人が一切の相続財産(プラスもマイナスも)を受け取らないとする意思表示であり、家庭裁判所に申し立てをして受理されることで効力が生じます。ところが、相続放棄を希望している者が遺品整理に関与したり、財産を処分・使用してしまった場合、それが「相続を承認した」と解釈されることもあります。つまり、相続放棄が認められない可能性が出てくるのです。
以下に、相続放棄と形見分けにおける遺品整理の注意点を整理します。
相続放棄・形見分けと遺品整理の関係
状況 |
行動例 |
注意点・リスク |
相続放棄を検討中 |
衣類や家具などを廃棄、通帳を開封 |
所有権の行使と見なされ、放棄が無効になる恐れ |
形見分けを実施したい場合 |
時計・装飾品・写真などの配布 |
相続人全員の合意が前提。財産価値ある品は要注意 |
相続放棄済み |
整理への関与を控える |
遺族の手伝いも制限対象になる場合あり |
形見分けを行う場合は、遺産分割協議の一部として相続人間で合意形成を図ることが大切です。また、相続放棄を予定している場合は、たとえ感情的に整理を手伝いたいという思いがあっても、行動によっては法的に「単純承認」とみなされてしまうため、一切の遺品への接触を控えるべきです。
このように、法的手続きと感情的な配慮が交錯する遺品整理の場面では、冷静な判断と専門家のアドバイスが欠かせません。形見分け・相続放棄を含めた整理タイミングを誤らないためにも、まずは家庭裁判所や弁護士、行政書士などに相談し、手続きの流れと整理計画を明確化することが最善です。